Engineering · アーキテクチャ

ループの4類型 — 委任の深さで設計するエージェントの自律度

エージェントループは委任の深さで4種類に分かれる:ターンベース(1ステップ)・ゴールベース(タスク)・タイムベース(スケジュール)・プロアクティブ(完全自律)。設計の軸は『どこまでAIを信頼して任せるか』。

要点

  • Anthropicが2026年6月30日に整理したループ4類型:ターンベース・ゴールベース・タイムベース・プロアクティブ。軸は委任の深さ(信頼のレベル)。
  • ゴールベースループの終了条件は2つ:目標達成 OR 最大ターン数到達。最大ターンを設定しないと無限試行のリスクがある。
  • チェッカーには小型・高速モデルが使える。各ターン後の達成判定だけなら、フルモデルを毎回回す必要はない。
  • ループ設計の最重要原則は『書く役(ライター)と判定する役(チェッカー)を分けること』。自分で採点すると甘くなる問題を避けるため。
  • どのループ類型を選ぶかは、仕事の性質と許容できる自律度で決まる。試作はターンベースから始め、信頼が積み上がったら段階的に移行する。

ループとは:自律実行の最小単位

ターンベース1ステップを委任ゴールベースタスク全体を委任タイムベーススケジュールを委任プロアクティブイベント起動・完全自律自律度・低自律度・高委任の深さ=信頼のレベル
4種のループは『どこまで委任するか』で分類される。左ほど人間が毎回関与し、右ほどAIが自律して動き続ける(Anthropic「Getting started with loops」2026-06-30)。

4種のループ:委任の深さで読む

Anthropicは2026年6月30日のブログ「Getting started with loops」で、エージェントループを委任の深さで4種類に分類しました。共通するのは『どこまでAIを信頼して任せるか』という軸です。

  • ターンベース(turn-based):1ステップずつ確認しながら進む。毎回人間が次の指示を与える形で、関与が最も多い。
  • ゴールベース(goal-based):目標を宣言してループを渡す。エージェントが目標達成または最大ターン数到達まで自律実行する。
  • タイムベース(time-based):スケジュールを設定し、AIがそのタイミングで自律実行する。
  • プロアクティブ(proactive):イベントを検知してトリガーされる完全自律型。人間の起動を待たず自律して動く。

どれが『正解』かは、仕事の性質と許容できる自律度で決まります。試作段階はターンベースで確認しながら進め、信頼が積み上がったらゴールベース・タイムベースへ段階的に移行するのが現実的な設計です。

ゴールベースの終了条件:どこで止めるか

タスク指示目標を宣言エージェント実行1ターン処理チェッカー評価小型・高速モデル継続(どちらでもなければ)完了目標達成強制終了max turns 到達目標達成max turns
ゴールベースループの終了条件は2つ:(1)目標達成、(2)最大ターン数到達。小型・高速モデルをチェッカーとして使うことで、この判定を低コストで行える(Anthropic「Getting started with loops」2026-06-30)。

ゴールベースループの設計ポイント

4類型のうち業務自動化で最も汎用的に使えるのがゴールベースです。人間はゴール(完了条件)だけを宣言し、エージェントが複数ターンをかけて達成を目指します。

ここで注意が必要なのが終了条件の設計です。Anthropicは「目標が達成されたか、最大ターン数に達したか」の2条件で終了すると整理しています(2026-06-30)。最大ターン数を設定しないと、達成できない目標を渡したとき無限に試行し続けるリスクがあります。

チェッカーには小型・高速モデルで十分なことが多い。各ターン後に『目標を達成したか』を判定するだけなら、フル機能のモデルを毎回回す必要はありません。これによりコストとレイテンシを抑えながらループを回し続けられます。

ループ設計で最も重要な選択:書く役と判定する役を分ける

Anthropicは同じブログで、ループ工学の最重要原則として「作業を行うエージェント(ライター)と、完了を判定するエージェント(チェッカー)を分けること」を挙げています。

自分で採点すると甘くなる問題の回避策です。モデルは自分が生成したアウトプットを検証するとき、無意識にOKを出しやすい傾向があります。書いた直後の自己評価は信頼性が低いため、チェッカーを別エージェントとして置くことで、検証の独立性を保てます。

この原則はターンベースからプロアクティブまで全ループ類型に適用できます。ゴールのパス・フェイル判定の厳密さがシステム全体の信頼性を決めます。

agens での対応:ループ類型と自律度の設定

agensでは、ターンベース(毎回確認)からゴールベース(タスク委任)まで、業務の性質と組織の信頼水準に応じた自律度を設定できます。スキルとワークフローがタイムベースに相当し、エージェントのイベント起動でプロアクティブに近い運用が可能です。どの類型で動かすかを設計段階で意識することが、コスト効率と安全性の両立につながります。

よくある質問

4種のループはAnthropicが定義したものですか?
はい。Anthropicが2026年6月30日のブログ「Getting started with loops」で整理した分類です。ターンベース・ゴールベース・タイムベース・プロアクティブの4種で、委任の深さ(信頼のレベル)を軸にしています。
ゴールベースループで最大ターン数を設定しないとどうなりますか?
達成できないゴールを渡した場合、エージェントが無限に試行し続けるリスクがあります。Anthropicはゴールベースループの終了条件として『目標達成』と『最大ターン数到達』の2条件を明示しており、後者のガードを設けることが設計上必要です。
チェッカーに大きなモデルは必要ですか?
ゴールの達成判定(パス/フェイル)だけなら、小型・高速モデルで十分なことが多いとAnthropicは述べています(2026-06-30)。フルモデルを毎ターン回すと推論コストが積み上がるため、チェッカーを軽量モデルに分けることはコスト効率の面でも有効です。
ターンベースとゴールベースはどう使い分けますか?
ターンベースは各ステップで人間が確認しながら進む形で、まだ信頼を積み上げていないタスクやリスクの高い操作に向いています。ゴールベースは一連の作業をエージェントに委任できると判断したタスクに使います。最初はターンベースで動作を確認し、安全性と品質が確認できたらゴールベースへ移行するのが現実的な順序です。
プロアクティブループの利用で注意すべき点は何ですか?
プロアクティブループはイベント検知で自律起動するため、誤ったトリガー条件や想定外のイベントが流れ込んだ場合、制御なしに大量の処理が走るリスクがあります。エラー時の停止条件と人間へのエスカレーション経路を事前に設計しておくことが重要です。

最終更新: 2026-07